2026年9月 vol.298

2026年09月10日

 秋雨前線が停滞し広範囲にわたり影響が出ています。全国至る所で豪雨災害が報告されていますが、この夏を振り返ると酷暑や渇水に翻弄されるなど、不均等な気候にもどかしさを感じます。

さて、昨今の話題と言えば長期金利上昇のインパクトが真っ先に思い浮かびます。我が国の長期金利は30年ぶりに3%の大台をつけました。経済の体温計とも言われる長期金利の回復は、歴史的転換点とも言えそうですが、急激な金利上昇が日本経済にとってブレーキとならないことを祈ります。金利上昇により多くの銀行株は上昇を続けてきましたが、3%台の金利水準が定着すると企業の借り入れコストが膨らみ設備投資にも慎重になることから、今後はマーケットもシビアな展開が予想されます。家計においては利子収入が増えるメリットが期待される一方、その恩恵を受ける世帯はほんの一握りの富裕層であり、住宅ローンの負担増など家計への影響は少なくありません。足元の金利上昇は世界的流れの中であることは間違いありませんが、特に我が国の積極財政に対する市場の警戒感は根強く、ドル高による自国への影響を容認できなくなった米国からの圧力は相当厳しいものがあると言えます。

 

 まあ、経済の話は専門家に任せるとして不動産関連に話を移すことにします。ここにきて、マンション価格の高値相場にも変調が見え始め、戸建住宅では某大手ハウスメーカーが需要の見込めない地方から撤退し、都市部に営業を集中させることが明らかになりました。注文住宅の建築費は、東日本大震災後以降の15年間でおよそ1.5倍に跳ね上がっており、建築資材や労務費の高騰による工事原価はこの10年で4割ほど上昇しているとの調査結果がまとめられています。他方で住宅市場の縮小は続き、新規住宅着工戸数はピーク時の171万戸から直近では70万戸にまで減少しています。更に、地価上昇はこれまでも再三取り上げてきた通りであり、ここに金利上昇が加わり市場環境は視界不良の中にあります。あるデータによれば、前述の15年間に1人当たりの賃金は住宅価格に対し実質25%目減りしている一方、金融資産は住宅価格に比例して上昇したとされています。資産インフレが大きな格差を招いていることは言うまでもなく、資産や頭金を持ち合わせない世帯にとってマイホームは一層高嶺の花になりつつあります。

 

 昨年のマンション市場においては、首都圏の新築マンション供給戸数は2万2千戸ほどで、ピークとされる2000年の9万5千戸から激減しています。建築費は都心も郊外もそれほど変わりませんので、価格転嫁し易い都心の一等地に供給が偏り、マンション各社は供給量が減少した分を好立地・高付加価値の高級マンションへシフトしています。かつてのように供給戸数を競う時代から、採算性を重視する時代へ突入したと言えます。

 

 この間に平均分譲単価は倍近くまで跳ね上がり、その高値相場は中古マンション価格にも波及し浸透しました。相場が上昇局面の時は新築がけん引し、下落局面では中古市場から崩れるというサイクルは市場の法則のようなものですが、中古市場では売り出し価格と成約価格との乖離を表す大きく開いた「ワニの口」が基調の変化を物語っています。右肩上がりの相場は一変し、物件による優勝劣敗が進んでいます。

 

 最後に、今後の建設不動産市場を占ううえで興味深いデータを紹介します。ゼネコン大手4社と不動産大手3社の純利益の合計では、前者が昨対比で40%増の6477億円、後者が13%増の7137億円と両業界の利益差はこの2年間で8割も縮小し肉薄してきたことが分かります。建築の利益率は今後も向上が予想され、両業界の利益合計が逆転すれば平成以降ではバブル期と先の東京五輪に続いての事になるそうです。これは何を意味するか?両社の力関係に少なからず影響をもたらし、不動産業界の交渉力が弱まることに直結するとの意見もあります。販売価格に限界が見え始めた今、コスト高によりマンション供給量は更に減少に向かうことも予想されます。