2026年6月 vol.295

2026年06月10日

 多くの地域で梅雨入りとなりましたが、既に夏を思わせるような天候が続いております。まだまだ気温の乱高下も見られますので、皆様も体調管理には十分にご注意下さい。

 

 さて、イラン情勢の緊張が続いておりますが、それからというものナフサを報道で耳にしない日は無くなりました。これまで、ナフサは日常生活において聞き慣れない単語でしたが、その不足は深刻さを増す一方で、今や物価高騰の代名詞になりつつあります。ナフサとは、原油の精製過程で得られる粗製ガソリンのことで、あらゆる化学製品の原料となっているそうです。その流通の目詰まりを巡っては、十分に数量を確保できているとする政府の見解と、現場から届く混乱と疲弊の声には相当乖離があるように思えてなりません。実際のところはどうなのでしょうか?当初は、大手事業者などが数量確保を目論み予防的減産に踏み切ったとの観測が強く、国民生活への影響は限定的と考えられていました。しかし、財務省の貿易統計によれば、中東からのナフサ輸入量は3月が37%減、4月は79%減となっていることが分かりました。実にナフサ輸入の7割が中東に依存してきましたので市場の混乱は必然と言えます。もちろん、代替調達も進み米国などからの輸入が拡大しているとされていますが、輸入量の落ち込みに対しナフサの輸入金額はそれほど落ちていませんので、数値が示すように石油危機に端を発した世界的ナフサ不足による調達価格の上昇は紛れもない事実です。そして、この数量不足に対し各社が資材の先取りに奔走した結果、急速に需要が集中したことが混乱の正体と言えます。しかも、問題はナフサそのものの輸入や国内での精製の落ち込みにとどまりません。当然のことながら、各国で製造されるナフサ由来の工業製品の原価や生産能力にも影響が及ぶわけですから、国内の数量確保だけで問題は収まるはずもなく、当面は我々の生活もホルムズショックに振り回されることになるのでしょう。今回の問題が限られた資源と向き合う契機となり、バイオ由来製品やクリーンエネルギーへの移行など、持続可能社会への転機になることを願います。

 

 関連して不動産業界にも動きがありました。不動産大手やハウスメーカーからは、中東情勢の影響に伴い工期の遅延による引き渡しの遅れや、一部住宅設備に計画変更が生じる可能性を契約者に通知したとの報道がありました。建築費高騰に金利上昇、ただでさえ不動産建築を取り巻く環境は厳しさを増しているというのに、これに工期遅れや建築価格の不確実性が加われば、消費マインドを一層冷やす恐れもあります。昨今では、転売など投機目的の不動産投資が都心を中心とした住宅価格高騰の一因となっているとの議論が活発化し、国もその抑制に本腰を入れ始めました。実は住宅価格高騰は東京だけの問題ではなく、諸外国でも同様に世界の投資マネーが大都市部に流れ込む実態が明らかになっています。住宅価格の高騰により、主役である国民が割を食わされている実情は今や主要国の共通課題となっているようです。イギリスロンドン市内では政府が外国人購入者に対し規制を強化した結果、17年ぶりに住宅価格が急落したと報じられており、他国でも同様に外国資本排除の政策が広がりを見せているようです。こうした問題に加え、以前から取り上げてきた再開発の延期など様々な要素が重なり合い、良くも悪くも不動産市況に何らかの変化をもたらすものと考えられます。

 

 もう一点、我々の生活への影響が避けられないニュースが人口問題です。出生率は過去最低を更新し、2025年の国勢調査の速報値では我が国の総人口は5年前の調査から約309万人減の1億2304万人となり、減少幅は過去最大を記録しました。最も印象的だったのは、都市の代表格とも言える全国20の政令指定都市のうち13の市で人口が減少している点です。また、47の都道府県庁所在地においても40市で人口が減少しています。その中において我が仙台市は辛うじて人口を維持できている数少ない都市のひとつとなっています。都道府県単位においては、45の道府県で人口が減少しており、減少率では秋田県の8.1%が最も高く、次いで青森県、岩手県と東北勢が上位を占める残念な結果となっています。奇しくも仙台圏が東北他県からの人口の受け皿になっていることは想像に難しくありません。一昔前は、都市部へ巣立った子世帯が定年を機に田舎の家を引き継ぐような構図が見られましたが、今や、親世帯が都市部に暮らす子世帯を頼って田舎を離れ近居する傾向にあるようです。生前の「実家じまい」とも言えるこの傾向は益々加速するのではないでしょうか。