2026年5月 vol.294
2026年05月08日
新緑が美しい季節となりました。今年のゴールデンウィークは原油高の影響もあり、節約型の過ごし方に人気が集中したようです。私はと言うと、初日から井上尚弥VS中谷潤人との世紀の一戦を堪能させて頂きました。近年のボクシング史において私の中では、メイウェザーVSパッキャオ、カネロVSクロフォードに次ぐメガファイトと評価しています。KO決着が期待される一方で、どの試合も実力が拮抗した技術戦が展開され判定決着に終わっています。今回の井上選手は判定とは言え採点以上の差を見せつけての貫録勝ち、負けた中谷選手にとっても評価を上げた好試合でありました。
さて、世の中のサイクルとは不思議なもので、遡れば、ウクライナ侵攻、コロナ禍、東日本大震災、リーマンショックなど、日本経済はバブル崩壊以降も様々な危機に直面してきました。我々不動産の世界では、東日本大震災では多くの被災地において特需が発生、驚異的スピードで復興を遂げました。コロナ禍での住宅販売は、在宅勤務などの新たなライフスタイルが追い風となり思いのほか好調に推移しました。ロシアによるウクライナ侵攻では、世界的なインフレを助長し、我が国では円安が加速、国内の不動産は海外勢や投資ブームによる投機対象となり資産インフレの象徴となりました。何れも我々不動産業者の予想に反し、不動産市場は活況を呈してきました。
今回のイラン戦争はどうでしょうか?当初大方の予測は早期終結だったように思えますが、ふたを開けてみれば既にアメリカの参戦から2ヶ月が経過し、世界中にその影響が飛び火しています。正に世界はエネルギー戦争とも言うべき泥仕合の様相です。ウクライナ侵攻以降、物価も資材価格も右肩上がりでしたので相次ぐ値上げに業界も免疫がついているとは言え、一部製品の受注停止のインパクトと大幅な値上げラッシュは予想を上回るものでした。既に着工中の現場では工事の中断を余儀なくされるかもしれませんし、計画段階の現場においては着工を先送りする事態に直面することもあり得ます。特に注文住宅の場合は住宅ローンで予算が固定されることが殆どですので、物価スライド分の吸収が難しく、悩ましい選択を迫られます。この状況が長引くと、住宅各社は土地の在庫が思うように捌けず、新規の仕入れにも慎重にならざるを得ません。更には、流通している仲介物件に関しても販売の長期化は避けられないと予想されますので、住宅用地に限定して言えば相場は調整局面に突入する可能性があります。一方で、確実に引き渡しが可能な新築完成在庫や比較的手を加えずに住めるような適正価格の中古物件などに需要が流れ、一部の物件には若干の追い風になるかもしれません。
また、悩ましい問題が金利の上昇です。日銀は先の金融政策決定会合で政策金利を0.75%程度で据え置くことを決定しています。しかし、インフレ抑制の観点からも日銀は利上げ姿勢を維持しておりますので、市場は既に折込済みとは言え、金利動向が住宅市場に与えるインパクトは小さくないと思います。金利に限って言えば、十数年ぶりの水準となる金利のある世界に戻ったに過ぎませんが、そもそも土地建物の価格上昇は当時とは比較にならないレベルに達しています。前述の危機の中でも不動産市場が好調に推移した背景には、低金利という揺るぎない下支えがあったことが一番に挙げられます。そして、右肩上がりに上昇する相場に乗り遅れないとする駆け込み需要にも似た現象が、好循環を生んできたと言えます。いわば、バブル崩壊前夜までの土地は上昇続けると誰もが疑わなかった「土地神話」に酷似しています。以前、10年ほどのサイクルで経営者が変わると述べたことがありますが、30年も経てばバブルの教訓を語れるトップが一線を退いていることも少なくありません。
今、年代別に見ると住宅を購入する世代では20代の方の持家志向が高いと言われています。資産インフレの中に育ち社会に出た「下がることを知らない」世代です。特に将来の人口減少や年金などの社会問題にもろに直面する世代であり、資産防衛などの感性が敏感な世代と言えるでしょう。
ここに残価設定型ローンや、返済期間50年の超長期ローンなどの仕組みが背中を押しています。私のようなバブル崩壊後に社会に出て資産が下がることを前提に人生設計をした世代とは価値観がまるで異なります。ただ一つ言えることは、良くも悪くも時代は繰り返すということです。そして、不動産は身の丈に合ったものを買うのが鉄則とされていますが、私の持論は少し背伸びして買うのが正解と思っています。後々にその資産性の差が顕著に表れるものです。もちろん、背伸びのし過ぎは禁物ですが・・・。
