2026年3月 vol.292
2026年03月10日
頬を打つ3月の風を感じるたび、思い起こされるのが東日本大震災の記憶です。あの未曽有の災害から早いもので15年の時が流れようとしています。街は復興を遂げましたが、震災の教訓をいかにして次世代に継承していくか今なお課題も多く残ります。
そんな最中、イスラエルとアメリカによるイランへの攻撃により、急に中東情勢が緊迫化して参りました。太古の昔から人類は争いを繰り返してきましたが、近代史を振り返れば先の世界大戦から80年、現代を戦間期と例えるならその間に様々な火種が燻っていたのです。平和ボケしている我が国にとっても今回の有事は決して対岸の火事とは言えず、国民生活にも大きな影響が及ぶことは必至の状況です。
さて、今号では最近の不動産に関連するニュースをピックアップしてみたいと思います。
・不動産建設業界にとって関心が高いのが、昨年末から何度か触れて参りました相続時における取得後5年以内の貸付用不動産に対する評価方法の見直しです。従来の相続税評価では、土地は路線価、建物は固定資産税評価が原則でしたが、2027年1月1日以降の相続・贈与では、5年以内に対価を伴い取得した不動産は取得価格に地価変動等を加味した評価額の80%が評価となります。事実上の増税措置と言えますが、5年経過後は従来の評価法が用いられます。この5年ルールが定められた背景には、税の公平性という観点に立ち、晩年に本人(被相続人)の意思が伴わない相続人主導による駆け込みの相続税対策は見逃さないという当局の強いメッセージが込められていると言えます。今国会を経て、通達の基準日がいつになるかに注視が必要です。経過措置として基準日時点で既に取得済みの物件や着工中の物件も旧基準が適用される可能性が高いと見られていますので、年内は駆け込みによる特需があるかもしれません。
・高値が続く都心のマンションですが、まずは中古市場から上昇基調にも若干変化の兆しが見え始めたようです。新規売り出し価格は、不動産会社が成約事例などを参考に算出した査定価格と売主の意向を考慮した希望価格で決まります。長らく続いた売り手市場と報道の過熱も伴い、売り手には未だに強気な値付けが目立ちます。その一方で、成約までの期間は長期化し、交渉を経た成約価格の伸びが鈍化傾向にあるとのデータが示されています。そのデータによると売り出し価格と成約価格に明らかな乖離が出ています。それでも、今後供給される新築マンションの価格は上昇が予想され、供給量も限られるため、中古市場が急速に冷え込むことは考え難いと見られています。
・住宅ローン金利もジワジワと上昇しています。タワマン節税にメスが入り、相続対策としてのメリットは以前よりは少なくなったものの、高騰するマンション市場は富裕層の特需なしには語れません。特に高額帯のマンション取引ほど自己資金の比率が高いため、金利上昇による市場への影響は限定的とも言えます。余談ですが、世界一高額と言われるニューヨークマンハッタンのマンション群は、富裕層が安全資産として購入し、その価値を損ねぬよう未使用状態で維持するそうです。どの国でも富裕層が考え着くところは資産防衛ですね。現実に帰り、日本の実需は実質賃金の伸び悩みもありペアローンや超長期50年ローンが主流になりつつあります。更には残価設定型商品も登場しています。某情報機関の調べでは、都内の住宅購入者の約35%がペアローンを利用し、うち4割が返済期間35年以上の超長期ローンを組んでいることが分かっています。若い実需層の多くに共通するのは、返済期間を長くすることで月々の返済を抑え、期間を全うするというよりは、途中住み替えなどにより現金化することをゴールに置いている点です。このままの市場が続くのならば賢い選択とも言えますが、10年周期で目まぐるしく経済環境は変わります。振り返ってもバブル崩壊、リーマンショック、東日本大震災、コロナ禍等々、何が起こるか分かりません。そうした意味においても今後の中東情勢から目が離せません。
・金融庁が全国の地銀に対し、不動産業者への融資に関し警告していたことが分かりました。貸出管理の甘さが指摘されており、都市部のマンション価格高騰の要因になっているとの指摘もあります。今後の不動産取引や事業用物件の建築などにも少なからず影響が及ぶ可能性があります。
以上、気になったニュースに私なりの解説を加えてみました。
