2025年7月 vol.284

2025年07月10日

 関西での観測史上最も早い梅雨明けを皮切りに、各地から記録的なスピードでの梅雨明けの発表が相次いでいます。季節先取りの猛暑が報告されていますので、皆様体調管理には十分にご注意下さい。

 

 さて、7月1日に国税庁から令和7年の路線価が発表されました。全国の平均変動率では4年連続の上昇を示し、特に伸び率が目立ったのが都市部や観光地でした。要因として、都市部のホテルやマンション需要と、インバウンドによる観光の盛り上がりが地価上昇を後押ししたとみられ、地価までも外国人頼みという構図に複雑な感情を抱く関係者も多かったのではないでしょうか。

 

 宮城県の地価は昨年に引き続き、東京、沖縄、福岡に次ぐ全国4位の上昇率を示し、依然として上昇傾向にあります。県内の上昇率トップは、多賀城市の駅北線通りとなっており、近く予定されている東北学院大学多賀城キャンパス跡地の大規模開発への期待値が反映されたものと考えられます。一方で、東北一の一等地として知られる仙台市青葉区中央の青葉通りは、上昇率が大幅に縮小、地元紙には「仙台駅前に減速感」の活字が踊りました。要因として、さくら野百貨店跡地における再開発の遅れが挙げられる一方で、これまで記録的な地価上昇を更新してきた反動による頭打ち感もあり、私は地方都市におけるポテンシャルの限界値を露呈したものと感じています。

 

 また、公的価格や実勢価格の高騰をよそに不動産市場を悩ませるのが賃料の限界と買い控えとも言える動きです。まず賃料についてですが、経済規模が脆弱な地方ほど、事務所や店舗、住居の賃料の伸び悩みが見られます。地価の上昇と建築費の高騰は、採算面において新規の事業計画にも悪影響を及ぼしており、昨今の公共工事の入札不調や再開発事業の延期あるいは中止なども、事業規模と事業費に対しテナントの確保や採算に見合う賃料を設定できないことにあると断言できます。更に郊外に目を向けると、テナント側に出店意欲があるにもかかわらず、働き手不足により出店が困難という皮肉な現象さえ起きているのです。

 

 昨今の物価高により、実質賃金の伸び悩みが指摘され久しいですが、米小売価格が一年余りの間に倍になっている実情に大騒ぎしている我が国は、何とも貧しい国に成り下がったものだと悲観せずにはいられません。それでも都市部における分譲マンションの販売は好調のようです。マンションはコスト積み上げ方式により販売価格が設定されますが、好立地のマンションは少々高くても引く手あまたのため、デベロッパーも用地取得には前のめりです。建築費高騰の影響もありその傾向は価格転嫁が容易な一等地ほど顕著です。好調の背景には、近年の家族構成の変化や共稼ぎ世帯の増加により、郊外の庭付き4LDKよりも通勤などの利便性に優れる都心の3LDKが支持される傾向にあるからのようです。しかも、都心ならば自家用車を持たずにカーシェアで十分な一面もあります。この都心回帰に対し、長期的視点に立てば郊外の団地が都心に移動してきたに過ぎず、都市機能の崩壊を招きかねないと警鐘を鳴らす専門家もいます。逆説的には、人口減少が避けられない中、職住近接は地方都市の理想形と評価もできます。

 

 首都圏では外国人投資家などを中心に不動産の購入意欲はまだまだ旺盛です。タワマンに代表されるような高額帯の物件は、年収倍率10倍以上に膨らみ高嶺の花となった実需層とは別の動きを見せています。特にマンションの場合、向こう2、3年後に分譲される物件は既に用地取得やプロジェクトが進行しており、コストプッシュで更なる販売価格の上昇が予想されることから、買い急ぎの動きも好調な販売に拍車をかけます。しかし、実需のマーケットが中心で、かつ一戸建て住宅が中心の地方では、地価・建築費・物価・金利などの上昇により、住宅を取り巻くあらゆる環境には逆風となっていて、ムードは一転して買い控えにシフトしているように思えます。