2025年5月 vol.282

2025年05月09日

 新緑が美しい季節となりました。今年のゴールデンウィークは物価高と曜日配列の影響も重なり、安近短で近場に手弁当といった光景が多く見られたようですが、皆様はいかがお過ごしでしたか?

 

 さて、多くのご家庭に固定資産税の納税通知書が届いた頃だと思います。確定申告を済ませた事業者様にとっては、これから住民税や自動車税に事業税、そして予定納税などあまり歓迎できない通知が続きます。ご存じの通り固定資産税・都市計画税は地方税となりますが、地方自治体の税収のうちおよそ4割を占める貴重な財源でもあります。昨年令和6年度に評価替えがありましたので、次回の評価替えは3年後の令和9年度となります。最近は地価上昇を受け、重税感を抱いている方も多いと思います。評価額は3年間ほぼ同額で推移しますが、課税標準額と負担調整率により、駐車場や事務所、店舗などの事業系の不動産をお持ちの方は毎年税額が上昇している可能性があります。一方、住宅やアパートなどの居住用不動産は、小規模宅地の軽減があるため、事業系不動産と比較すると増税感は低いと思われます。

 

 都市近郊の農地が維持できるのも課税標準により負担軽減を受けているからです。注意が必要なのは、地価公示や路線価、固定資産税評価などは連動していますので、維持する上においては地価が上昇したからと言って手放しで喜んでばかりはいられません。固定資産税はランニングコストということが言えますが、不動産を取得する際の登録免許税や不動産取得税なども固定資産税評価額がベースとなりますので、不動産取引においても事実上の負担増にあると言えます。固定資産税同様に居住用不動産の場合は、一定要件を満たすことで軽減措置がありますが、事業系不動産には軽減はなく、購入した際のイニシャルコストの負担は少なくありません。相続税の評価も土地に関しては原則路線価を用いますので、固定資産税が上昇したと実感されている方にとって、それは確実に路線価=相続の評価も上がっていることを意味します。加えて、平成27年より相続税を計算するうえでの基礎控除額が減額されましたので、これに伴い、改正前の相続税対象者は全体の5%とされていたのに対し、その対象は今や10%にまで広がったと言われています。これは平均値ですので、地価の高い首都圏や大都市圏などでは、それ以上の割合で課税対象者が増えていることは説明するまでもありません。

 

 昔から税金対策として、賃貸住宅の建築は有効とされてきました。ここでは概略のみ解説しますが、これまで駐車場だった場所にアパートを建築したとしましょう。土地固定資産税・都市計画税は総じて5分の1程度に軽減され、新築した建物では構造体により最長で5年間にわたり評価額は2分の1の軽減を受けます。また、不動産取得税については、40㎡以上(240㎡未満)の部屋の場合は1世帯当たり1200万円が軽減されますので、事実上は多くのケースで非課税となり、同時に土地を取得した場合は土地に関しても1世帯につき200㎡まで軽減を受けますので、土地の不動産取得税に関しても事実上非課税扱いになることが殆どです。もちろん、不動産取得税の軽減を受ける目的でアパートを建てる方はいないと思いますが、間取りを検討するうえではポイントになります。そして、一番のメリットは償却資産を持てることと、相続税上の評価を圧縮できる点にあると言えます。前者については言うまでもありませんが、償却資産は金銭の支出を伴わない唯一の経費となります。アパート事業に際し、例え借り入れが伴ったとしても、帳簿上は償却費の効果でマイナス計上でもキャッシュフロー上はお金を残すことが可能です。更に、近年は地価上昇と建築費高騰を背景に中古物件が見直されていますので、借入残高以上の金額で売却に成功すれば資金を手にすることも稀なことではありません。後者は昔からの定番と言うことができますが、アパート建築により土地建物とも相続評価上は投資金額よりも低く評価されますので、資産圧縮効果が期待されます。土地に関しては路線価から貸家建付地(借家権割合×借地権割合)として評価減があり、建物は建築費の半分程度の固定資産税評価額を基準に借家権割合による評価減も得られますので、総投資額に対し半分以下に資産を圧縮することが期待できます。一方、近年では行き過ぎた相続対策を否認した最高裁判決も下されていますので、ご本人の明確な意思や専門家の意見など、慎重に対応する必要があります。ちなみに、私にとっての相続税対策とは家族円満であること。そして何よりも被相続人の方が長生きしてくれることに尽きると考えます。