2025年3月 vol.280

2025年03月10日

 2月下旬に発生した大船渡の山林火災は延焼を続け、大きな被害をもたらしましたが、火災の一日も早い鎮圧を祈るとともに被災地の皆様には心よりお見舞い申し上げます。

 

 間もなく地価公示価格が発表されます。昨年の取引の基調を見る限り、都市部では引き続き地価上昇を示す地点が多いと予想されます。一方、地価の高止まり感もあり上昇幅は縮小するものと考えられます。最近では高騰する不動産市場に関する報道を耳目にする機会が増えました。それゆえ、世間一般にも不動産価格と建築費高騰は広く周知されていると思います。無論、金融や不動産建設関係者の間でもこの話題で持ちきりです。それによると、建築費は高止まりどころか更に上昇、その反動で地価は調整局面に入るとの見立てが大半を占めているようです。

 

 前号でも、不動産市況について触れましたが、その続きについてお話しさせて下さい。まずは肌感覚の話しになりますが、東日本大震災を起点に一昔前と定義するならば、仙台市内の住宅地は2倍、商業地は3倍以上、建築費も2倍、投資利回りは2分の1以下と表現することができます。仙台市内の地下鉄沿線やJRの人気駅周辺で、しかも駅徒歩圏内ともなれば、坪50万円を下回る住宅用地は皆無と言っても過言ではありません。特にここ数年で上昇率は大幅に更新されたと断言できます。仮にこれらの人気エリアに狭小地を購入し平均的な一戸建てを建設しようとするならば、その予算は6000万円スタートの覚悟が必要です。同様に、昨今の経済環境下においてコスト積み上げ方式となる分譲マンション価格が上昇を続けていることは必然であり、仙台市中心部のマンション価格は坪単価300万円時代に突入しています。そして、これから販売されるマンション価格は更にその上を行く可能性がありますので、デベロッパーはいかにしてグレードを保ちながら専有面積を絞り販売価格を抑えるかに苦慮していると言えるでしょう。

 

 昨今話題となった高級マンションが都内の平均価格を吊り上げたことは周知の事実です。都心では富裕層の実需以外にも、投資や転売目的で取得された物件が新築未入居のまま高値で流通する構図が散見されます。状況は次第にエスカレートし、同一物件内に複数の転売物件と賃貸物件の在庫が確認できます。相場が安定しているうちは良いのですが、物件が大規模になればなるほど(同じ割合の空室が発生すれば、分母の大きい物件ほど需要側の選択肢は広がり、買い手市場になります)棟内で売り急ぎや破綻などで安価な取引事例が発生すると、連鎖的に他の住戸も値崩れを起こす可能性が高まります。バブル末期も同じような現象が見られましたが、高騰する不動産価格で期待利回りが得られず、短期間で転売する投機目的の取引が横行しました。鎮圧を図った政府による総量規制が引き金となり、バブル崩壊を招いたことは歴史に残る一幕と言えるでしょう。

 

 住宅ローンは、年収の8倍ほどが目安になるでしょうか。前述の住宅価格では、一次取得者には中々手が届きません。溢れた需要は郊外や中古市場にも波及し不動産価格を押し上げています。最近では、パワーカップルに象徴されるように住宅ローンに「ペアローン」が浸透し、返済期間40年、50年の商品もリリースされ需要を伸ばしていると聞きます。私は、超長期ローンが毎月の返済額を抑えるという切実な事情を補う一方で、期間を全うしようとする購入者は意外に少ないのではないかと見ています。だからこそ、将来の住み替えなどフレキシブルな視点を持ち、少々高額でも資産性に優れる物件が選ばれるのだと思います。但し、ここ10年以上不動産は右肩上がりを続け、ほぼ十数年にわたり超低金利の世界に浸ってきた我々は、不動産市場のクラッシュや金利上昇リスクをこれまで以上に意識しなければなりません。今後は、金利上昇により住宅ローン破綻が増えると予想する専門家も少なくありませんし、このままインフレが進むと管理費や修繕積立金の値上げなども家計には大きな負担となります。そして、不動産市場もいつまでも右肩上がりとは限らないからです。

 

 特にペアローンの場合は互いに債務保証する仕組みのため、離婚などに進展した場合に面倒なことに陥りやすいのも事実です。比較的安価な時代に購入した物件は、ローン残高が順調に減り売却時にキャッシュを生み出し、手にした資金で互いに別々の人生を歩みましょう「お幸せに」と言うシナリオもあり得るかもしれません。逆に市場が下降線を辿っている状況下では、不動産価格が残債を下回るいわゆる残債割れに陥り事態が泥沼化する恐れもあります。いずれかの名義に集約するにもハードルが高く、売却するには資金ショート相当を補填する必要があります。

相場の高い今だからこそ、より慎重な物件選びと専門知識の高いアドバイザーが必要です。是非、住まい選びは当社へご相談下さい。