2024年5月 vol.270

2024年05月10日

 

 心地良い微風と新緑が鮮やかに映える季節となりました。今年のゴールデンウィークは最大で10連休となりましたが、円安や物価高の影響のため近場で過ごす方が多かったようで「安近短」の休日となりました。

 

 さて、先月30日に総務省は5年に一度行われる「住宅・土地統計調査」の結果を発表しました。これによると全国の空き家は約900万戸に上り過去最多を更新しました。このうち、515万戸ほどは賃貸住宅の空室や別荘などに分類されますが、使用目的の無い放置空き家は前回調査より37万戸増の385万戸を数え、総住宅戸数に占める割合は実に5.9%に達します。都道府県別に見た空き家率では、和歌山、徳島が最も高く西日本で高い数値が見られています。一方で、東京や神奈川、大阪、愛知、福岡などの大都市圏の空き家率は少なく、地域間の経済格差を如実に表した結果と捉えることができます。

 

 もう少し詳しく見てみると、空き家となった住宅の取得原因の半数以上が相続により取得されたものとなっており、所有者の4分の1が遠隔地に居住していることが報告されています。更に空き家になっている理由については次の順番となっています。1.物置として必要だから。2.解体費用をかけたくないから。3.特に困ってないから。以下、順不同で特徴的な回答を抜粋すると、更地にしても使い道がないから、取り壊すと固定資産税が高くなるから、借りる人が少ないから、買う人が少ないからなどが挙げられます。アンケートの結果からも、空き家は、所有者(相続人)の高齢化や経済的な理由に加え需要の少ない物件(老朽化や不便な場所)であることが分かります。また、空き地についても同様に相続や贈与により取得したケースが多いこと分かっています。人口減少により、古い団地や限界集落のみならず、地方都市の市街地などでも未利用の土地が分散化しながら増えているにも関わらず、依然として農地の転用や再開発により新たな都市的利用への転換が進んでおり、土地利用の非効率化が加速しています。そう遠くない将来には、インフラの維持や行政サービスにも大きく影響することが懸念されます。

 

 放置空き家については、周辺環境へ与える影響も少なくなく、防災や防犯面だけでなく、衛生面や景観面でも地域に悪影響を及ぼす場合があります。また、昨今の大規模災害においても所有者不明により、復興の妨げとなったケースも憂慮すべき点です。政府も様々な法改正を進めていますが、今回はこの4月1日から施行された相続登記の義務化と実務的にも利用頻度の多い、空き家の譲渡所得3000万円特別控除について簡単に解説しておきます。まず前者については、相続人に対して不動産を相続で取得することを知った日から3年以内に相続登記をすることが義務付けられました。これにより、所有者不明不動産問題解決の糸口になることが期待されます。登記手続きが進めば自治体の固定資産税等の徴収もスムーズに運ぶと考えられますが、個人的には、外国人所有者が増え続けている昨今、相続登記は更に不確実性を増し追跡が困難になるのではないかと懸念しています。

 

 次に空き家の譲渡所得3000万円特別控除についてですが、以前にも何度か触れた通り、こちらも近年の改正により適用範囲が拡充されました。前提は昭和56年5月31日以前に建築(マンションは除く)され相続開始直前まで被相続人が住まいとしていた家屋またはその敷地に限りますが、一定要件を満たせば被相続人が老人ホームに入所していた場合も適用対象となります。もっとも実用的な例としては、相続日から起算して3年が経過する日の属する12月31日までに空き家を解体して売買する場合です(途中、貸家や駐車場として賃貸した場合は対象外となります)。譲渡所得から3000万円が控除されますので、宮城県のような地方の住宅の場合は、非課税で済む場合がほとんどです。ご紹介した2例に関しては、これ以上放置空き家を増やさないという点においては有効と考えられますが、普及には不動産自体の流動性や登記費用の負担感などの根本的課題もあります。また、放置空き家については管理不全空き家と認定する制度も新設され、自治体の指示に所有者が従わない場合は固定資産税の減免措置が受けられなくなりますが、効果は限定的と見られています。結局のところ、解決には所有権という大きな壁が存在するのです。