2023年11月 vol.264

2023年11月10日

 今年も残すところ2ヶ月となりました。木々も赤や黄色に色づきはじめましたが、秋の行楽シーズン、皆様はどのようにご計画でしょうか。

 

 余談ですが、NHK大河ドラマ「どうする家康」もいよいよ、関ヶ原、大阪の陣と続き、佳境を迎えます。個人的には毎週楽しみに見ておりますが、史実と異なるとの意見や現代風のアレンジもあってか、王道の戦国時代ものにもかかわらず視聴率は今一つのようですね。

 

 さて、富県みやぎを掲げる我が宮城県ですが、先ごろ、台湾の半導体受託生産大手のPSMCとSBIホールディングスが共同で大衡村に半導体工場を新設すると発表しました。地元にとっては、新たな雇用の創出など、大きな経済効果が期待できるとあって歓迎の声が高まっています。

 

 少し話題を変えます。先ごろ、政府は臨時の総合経済対策を閣議決定しました。物価高対策として、国と地方、民間投資を合わせた事業規模は37.4兆円となるそうです。デフレ脱却の旗印のもと、選挙対策なのか内閣支持率浮揚策なのか分かりませんが、急遽、所得減税と低所得者向け給付が加えられ、国民に還元すると迷走中です。減税、給付ばかりをマスコミが取り上げ独り歩きしていますが、昨今の物価高により国の税収は3年連続で過去最高を記録、そこで、過去2年間の所得税と住民税の収入3.5兆円分を正に還元するという愚策にうって出たわけですね。実際の減税規模は3兆円程度を見込んでいるとのことです。

 

 今回の経済対策では、ガソリン価格抑制のための補助金が4月まで延長されます。この他にも、子育て支援や賃上げ支援などが盛り込まれていますが、中身はいずれも中途半端なもので、その場しのぎのバラマキに見えてなりません。

 

 少し前までは円高が経済悪化の一因とされてきましたが、皮肉にも今は円安により輸入物価が上昇し国民生活を苦しめています。結果的に恩恵を受けたのは一部の商社や輸出企業など限定的です。仮に賃金が上がったとしても社会保険料の負担が大きく、手取り賃金は伸び悩み、物価上昇には追い付かない現状があります。当然のことながら、低賃金で支えられてきた多くの産業は転換期を迎えることになり、消費者も従来の対価では同等のサービスを享受できなくなるでしょう。

 

 これまでも、不動産市場の現状について何度か触れてきましたが、地価上昇により固定資産税や相続税などの税収は確実に増えているはずです。しかし、極端な地価上昇と建築費高騰で住宅価格と所得との乖離が大きくなり過ぎ、不動産業界にとって物価上昇は手放しでは喜べない状況になりつつあります。来年には働き方改革で、職種によっては所得が減少する家庭も出てくるかもしれません。住宅も都心と郊外の二極化が加速しそうです。

 

 IMFの発表では、我が国はGDPでドイツに抜かれ世界4位に後退することが明らかになりました。我が国の国力が衰えているのは事実です。ドイツの人口は我が国の3分の2程度ですので、人口イコール国力との考えも改めなければなりません。更に、国民一人あたりのGDPでは、G7の中においては最貧国に分類されます。政府の目指す物価上昇が生産性を向上させ経済発展を主導するとは限りません。生産性向上には労働力が欠かせませんので、労働力を補うためには、頻りに議論されている年収の壁である106万円、130万円の壁の仕組みを抜本的に見直し、働き損を無くし労働力不足をカバーすることが有効と考えます。

 

 いつまでも金のバラマキを続け、次世代に膨大な借金を先送りする政策から転換し、経済大国を目指すのか、違った価値観を見出すのか、我が国のあるべき姿を示すのが政治家に課された役割と思うのは私だけではないはずです。今こそ規制やしがらみを取り除き、イノベーションを誘導する時です。

 

 冒頭の戦乱の世を鎮め、天下泰平の世の礎を築かれた家康公なら、この難局にどう立ち向かったでしょうか?まさに「どうする」です。