2021年11月 vol.240

2021年11月10日

 11月に入り紅葉狩りを楽しんだ方も多いのではないでしょうか。今年も早いもので2ヶ月を残すばかりとなりました。

 

 緊急事態宣言が明け、各地で人出が戻り始めており、徐々に生活様式もコロナ前に戻りつつあるようです。感染者激減の理由は科学的には証明されていないようですが、やはりワクチンの効果が大きかったのでしょうか。一方、ウィルスの弱毒化(自滅)説を唱える研究者も少なくありません。更に、経口薬が承認され普及すれば、かなり早い段階で元の生活に戻ることが期待されます。

 

 さて、アメリカ国内ではインフレへの懸念が高まり、FRBが金融緩和政策を段階的に解除することを決定しました。結果的に2年弱で低金利政策に終止符が打たれた形です。解除自体、以前から議論されていたこともあり市場は織り込み済だったと言えますが、新興国のみならず我が国の為替や株価、ひいては経済にも今後少なからず影響が出るのではないでしょうか。一方の我が国は未だに低金利政策から抜け出せず、デフレ脱却目標も達成できないでいます。政府は2025年までにPBを黒字化する目標を掲げていますが、それどころか、この20年間で国・地方合わせての債務残高はおよそ1.8倍、1200兆円にものぼる天文学的数字にまで積み上がりました。今回の総選挙では、与野党ともに所得の分配など聞き心地の良い公約が目立ちましたが、具体的な政策に乏しい印象は否めませんでした。一億総中流社会と言われた時代から30年、完全な格差社会へと突入し、残念ながら貧困と格差の負の連鎖は否定しがたい事実です。最近では「親ガチャ」なる言葉まで生み出されてしまいました。経済が成熟し社会の基盤が整うと、その過程で出来上がった経済的不平等を覆すのは簡単ではありません。生まれながらスタート地点がそれぞれ違うのは言うまでもありませんが、その理不尽さを乗り越え、自分なりに納得のゆくゴールを探す旅こそが人生なのでしょうか。偉そうに言う私も未だ答えなど見つかりません。

 

 話題を経済の話に戻しますが、他の先進国と比較し、東京の不動産はまだまだ安く割安感があると言われています。加えて、所有権や登記など法的に不動産の権利が担保され固定資産税等のランニングコストが低いのも特徴です。ところが、今では都心部に未利用の土地はほとんど見当たらず、建て替えや再開発以外、誰もが求めるような立地の不動産は年々少なくなっていると言えます。そこに世界的な金余りと投資ブーム、更にコロナ前までは開発用地の争奪戦が繰り広げられ、デベロッパーの土地仕入れ価格と建築費高騰の末、分譲マンションは過去最高の販売価格が更新されました。人々の所得は伸び悩んでいるにも関わらず、販売価格の上昇で乖離は広がるばかりです。それでも都心部のマンション販売は好調です。供給量が少ないのも一因とされていますが、富裕層の他にも、低金利を背景に世帯収入の大きいパワーカップルの購買欲が旺盛です。実際には共有名義での不動産購入はそれほど多くないと言われていますが、世帯主単独名義での購入であっても、配偶者の所得はそれを補うものであることは言うまでもありません。女性活躍社会と言われ久しいですが、正に生活スタイルの変化が不動産市場を下支えしていると言えるのです。

 

 そして、コロナ禍では巣ごもり特需でお家時間が増え、住宅取得への関心が高まったことも追い風になっていたと言えます。特にマンションや建売住宅は完成品を購入する為、コロナ禍で打ち合わせ時間が制限された注文住宅の苦戦をしり目に順調に需要を刈り取ったと言えます。裏を返せば、アフターコロナで行楽や余暇などお金の使い道が変われば、住宅購入の優先順位が下がることも念頭に置く必要があります。加えて、前述の世界的な金余りがFRBの金融緩和政策の転換がどのように影響するかも注視すべき点です。不動産市場は需給関係で成り立っていることを忘れてはなりません。