2021年7月 vol.236

2021年07月09日

 本格的な梅雨時期をむかえました。九州豪雨から一年、奇しくも昨年と同時期に今年は熱海市内において土石流による甚大な被害が報告されました。家屋や車が押し流される衝撃的な映像に誰もが目を疑ったに違いありません。被災地では今もなお懸命な救助活動が続いておりますが、一人でも多くの人命が救われることを心よりお祈り致します。

 

 さて、コロナ禍の混乱が続く中、東京オリンピック開催まで2週間余りとなりました。都内における感染拡大は、オリンピック強行で国民の緊張感が途切れた結果と言えます。無策の末に招いた4度目の緊急事態宣言。あらゆる犠牲を払ってまでオリンピックに拘るのならば、最後にもう一度、リーダーの言葉で責任の所在と覚悟を明確にし、国民の理解を求めるべきでしょう。

 

 話は変わりますが、今年も路線価が公表されました。宮城県内の標準宅地6000地点の変動率は平均値が1.4%で全国3位となり、9年連続の上昇を示しました。一方、全国的変動率は平均0.5%で6年ぶり下落となりました。下落率の大きい地点を見るとインバウンド需要の恩恵を受けてきた観光地の繁華街などが多く、インバウンド需要の比重が明暗を分けたと言えます。その点において、もともとインバウンドの少なかった仙台圏は地価の影響を受けにくかったと言い換えることができるでしょう。

 

 ところで、最近「ウッドショック」なる言葉が世間を騒がせております。ウッドショックの原因として挙げられているのが、中国、アメリカ国内におけるアフターコロナの住宅市場回復で、海外のサプライヤーが日本よりも他国向けの輸出を優先した結果と言えます。また、巣ごもりによるDIY需要や、先のスエズ運河の貨物船座礁で船舶滞留による輸送遅延なども影響しているとされています。現在、国内の木造住宅に用いられる構造用集成材の7割は、強度に優れた樹種の確保と安定供給の目的で原材料を海外からの輸入に頼っています。原材料の確保が困難な今日においては、プレカット材の減産により大幅な製品価格の値上げを余儀なくされています。その原材料不足の影響は構造材にとどまらず、建具などの建材や家具などにも波及しております。当然のことながら、国産材の内需拡大への期待が高まりますが、抜本的な産業の底上げには至っていないのが現状のようです。


 多くのパーツで構成される住宅において、このような産業構造的問題は災害時などに顕在化しがちです。記憶に新しいところでは、コロナ禍での中国工場の操業停止による便器不足、東日本大震災時は工場被災や部品供給不足による電気温水器やIHヒーターの納期遅れ、今年も半導体不足によるエアコンの在庫不足が囁かれ始めました。過去にもアメリカの森林保護団体の活動に端を発した木材供給不足という問題もありました。しかし、これらは全て時間が解決してきました。今回のウッドショックも一過性のものだろうと考えられますが、収束の兆しが見えない現時点において関係者にとっては死活問題です。特に中小以下の工務店は材料高騰のあおりを受け、金額が見通せないだけでなく納期のめどが立たず、契約を受注出来ないという苦境に立たされています。


 そして、ハウスメーカーや大手ビルダーなども、請負金額・販売価格への転嫁を実施又は予定しており、コロナ禍のテレワーク特需による戸建て志向の盛り上がりにも少なからず影響が及ぶものとみられています。各社は値上げ移行期間の駆け込み需要の囲い込みに必死ですが、値上げ後の反動減の影響も懸念されます。


 某シンクタンクによると、ウッドショックに起因し上期の住宅着工戸数が前年同期比で5万7千戸減るとの試算が発表されております。しかしながら、ウッドショックは資源の枯渇ではなく外的要因による一過性のものです。過去の事例に学べば事態は短期で収束するものと考えられます。不動産取引への影響も限定的と考えて良いでしょう。