2021年5月 vol.234

2021年05月10日

 先のゴールデンウィークはあいにくの天気とコロナの影響で我慢の日々が続きました。コロナとの闘いが1年以上続くというのに具体的な対策を打てないまま、自粛頼みの政策に国民の不満と疲弊も限界に達しています。

 

 さて、コロナ下で不動産を巡っては様々な報道がなされております。テレワークの普及により、郊外の住宅が見直されている。マンション販売戸数が大幅減少等々。一つ一つの変化を取り上げればどれも事実であることに違いはありませんが、これまでの根幹が覆るほど劇的にトレンドが変わったわけではありません。

 

 これまで、五輪効果とインバウンド効果も重なり、大規模な再開発などでホテルや商業ビルラッシュに沸いた東京でしたが、不動産バブルの本質は東京の不動産が世界の大都市と比較しても割安と評価されてきたからです。この間、不動産各社は土地の獲得に苦慮し、近年では好立地のマンション供給が少なくなった印象さえ受けます。更には、条例などの規制によりマンションの建設が難しい立地も増えてきました。また、デベロッパーにも変化が見られます。賃貸マンションや老人ホームを開発し保有或いはファンドへ組み込むなど、出口戦略の多様化も垣間見えます。その一方で、まとまった土地を確保しやすい湾岸エリアには大規模なタワーマンションが大量に供給されてきました。

 

 コロナ下でインバウンド特需は沈静化しましたが、東京都心では土地不足により今後もマンション価格は高止まりが続くと考えられます。これまで好立地のマンションというと、大手企業の社宅やグランド、工場などの遊休地が事業用地として再生されてきましたが、近年では多くの企業が資産のリストラを完了しており、まとまった希少地が流通すること自体少なくなったことも要因として挙げられます。

 

 現在、マンション各社はコロナ下で販売活動を制限されている一方、適度な商品在庫を抱えているため、上手く販売を調整できる環境にあります。従って、都内で供給量が減ったとは言え、販売価格が維持されている状態と考えられます。今後の供給についてですが、建築費が以前の水準に戻る好材料が見当たりません。資材価格はもとより、近年の働き方改革などがコスト押し上げ要因となり建築費に反映されるからです。結果、コロナ下で所得が伸び悩む中においてもマンション価格と所得の乖離は簡単には縮まりそうにありません。その反動で、比較的立地の良い中古物件が当時の分譲価格を上回る高値で取引されるという現象がしばらく続くと予想されます。むしろ、年代によっては、共用部が充実し仕様やプランの良い中古物件が新築と比較し割安感があると評価されることになるでしょう。また、中古市場を下支えしている一因として、リノベーションの普及が見逃せません。専門の買い取り業者が室内のリノベーションを実施し高付加価値を付けて高値で販売するパターンや、消費者自らが購入後に自由にリノベーションを行う事例が増え、立地が良く良好な管理が行われているマンションは流通対応年数が大幅に延びたと言えます。

 

 そして、都心ならではの特権と言えるのがマンションの建て替え事業です。好立地のヴィンテージマンションは今後も新たなパートナー(デベロッパー)を迎え、次々と生まれ変わることでしょう。従前の所有者には事業協力者として住戸が返還されますので、分譲戸数が限定され希少性は高まります。

 

 国内の住宅地の価格は、バブル崩壊後の失われた20年間に昭和58年以前の水準にまで下がったと揶揄されてきました。居住用財産を譲渡した際に3000万円控除がありますが、そもそも売却益が生じる住宅の多くが昭和58年以前に取得された物件でした。しかし、近年の不動産価格上昇に伴い、購入時期を問わず売却益が生じるケースが増えたように感じます。土地神話ならぬ住宅神話です。参考までに、3000万円控除は必ず期限内の申告が必要です。又、買換えの際は3000万円控除と住宅ローン控除との併用ができませんので注意が必要です。