2020年9月 vol.226

2020年09月10日

 9月に入ったというのに残暑が続いております。このような暑い日の連続はあまり記憶にありません。皆様におかれましてもくれぐれも体調管理にご注意下さい。

 

 さて、世間はコロナの話題ばかりですが、少しずつ緊張感にも緩みが出始めたころだと思います。とにかく重症者数を抑えながらギリギリのところで経済を回していくしかありません。数値を見る限り各方面への影響は深刻ですが、実態経済をしり目に日経平均株価は、この半年の間にコロナ前の水準にまで回復しました。ニューヨーク市場も同様です。これは、世界各国の財政出動と中央銀行の低金利政策による金余りが要因とみられており、余った金が投資に向けられバブル状態を生んでいると考えられます。専門家の中には、実体経済に反したバブルに警鐘を鳴らす人も少なくありません。同じように投資マネーが入り活況を見せてきた不動産市場ですが、そのけん引役となってきたホテルや商業ビルの開発にコロナの影響で暗雲が立ち込み、この先の地価動向が気になるところです。今回は市場のレポートと実務上肌で感じていることを簡単にまとめてみたいと思います。

 

 国交省は、去る8月21日に三大都市圏と主な地方都市100地点の地価動向報告(地価LOOKレポート)を公表しました。報告によると前回4月の下落地点が4だったのに対し、今回は38に急増しました。これはコロナ禍による店舗ホテル需要の激減が主要因とされております。ちなみに前回調査では仙台市中央一丁目で上昇が確認され、コロナ禍の今回も上昇を示しました。

それでは、同地点での第二四半期のレポート内容を抜粋してお伝えしましょう。「周辺のオフィスでは空室率は引き続き低位で推移、賃料上昇傾向が続く。コロナ感染症の影響でキャンセル等も見られるが影響は限定的である。ホテル用地の取得需要は先行きの不透明感から方向性を見定めている。商業施設の回遊性の高さから仙台駅前への一極集中傾向が続いている。当地区に対する在京投資家等の投資意欲は依然として認められ、地価動向はやや上昇傾向で推移した。」以上のようにコロナの影響は限定的との楽観的な見方が示されました。

 

 日常の業務においては、飲食店を中心に賃料の値下げが続きましたが、今は落ち着いた印象です。これは公的支援や融資制度が行きわたった結果と考えられます。一方で、撤退を余儀なくされた店舗では後継テナントが見つからず、新築物件も含め空きテナントが目立ち始めている印象を受けます。当然、ビルの入居率が落ちればビル全体の収益性が下がりますので、オーナーチェンジの売買物件では利回りに直結し値下げ圧力となっています。また、収益性の悪い物件を中心に売り急ぐ動きも見られ、これまでの売り手市場から若干の変化が感じられます。賃貸住宅は、外国人留学生が入国できない状況にあり、これまで低価格帯の物件を下支えしてきた需要に少なからず影響が出始めています。これから秋口にかけて法人の社宅需要のシーズンに突入しますが、例年に比べ動きが鈍い印象です。しかしながら、異動が分散しているとの見方もできますので、決して悲観するほどの状況ではありません。商業施設ではドラッグストアなどごく限られた業種で出店意欲が旺盛なものの、全体としてはあまり勢いが感じられません。

 

 売買はどうでしょうか?前述の通り、一部で換金を急ぐ動きも見られますが、一方で金余り状況に変わりありませんので、取引自体は活発な印象さえ受けます。住宅については自粛期間の反動もあり5月あたりから堅調に推移しているように感じられますが、他方では住宅苦戦との報告も寄せられておりますので安易に結論付けることは避けたいと思います。一致して言えることは、在宅時間の増加に伴い物件の検索数が伸びたことです。テレワークへのシフトが増加し、検索エリアが広範囲に及び、更にUターンやIターン需要の問い合わせが確実に増加しています。総じていえば、中間層ほど年収の先行きにシビアで住宅取得に消極的と言えますが、他方で年収が減収に転じることへの警戒感が駆け込み需要につながっているとの見方もあり、比較的低価格帯の物件で引き合いが増加傾向にあると言えます。

間もなく地価調査結果が発表されますが、市場の変化がどのように反映されるか注目してみて下さい。