2017年8月 vol.190

2017年08月10日

 長かった梅雨が明け、「東北にもようやく夏が訪れました」と言いたいところですが、皮肉にも仙台では梅雨明け発表後からスッキリしない天気が続き、子供たちには少々気の毒な夏休みとなっています。


 政治の世界では、第三次安倍改造内閣が発足しました。一連の疑惑が解明されない中での内閣改造は果たして支持率上昇の一手となるのでしょうか?今後の政局に注目です。ちなみに私はと言いますと、忖度だの口利きだのどうでもいい話で、それよりもちゃんと結果を出してもらえれば良いと思うのですが、多数の国民の目はもっと厳しいようですね。
 

 さて、話は変わりますが、国内の企業数は減少を続けており、この15年間に100万社が減少したとされています。商法の改正により少額の資本金で会社を設立できるようになった為、新会社も多く誕生していますが、その多くが短命のうちに消滅しているという厳しい現実があります。国内の企業の99%は中小企業であることから、事実上100万もの中小企業が減少したと言えます。理由も様々だとは思いますが、短期間での事業の行き詰まりは小資本による競争力の乏しさ、そして老舗企業に多い課題が後継者不足です。仮に後継者が存在する場合でも、この厳しい経済状況下で子供に経営の苦労を負わせたくないとの親心も伺えそうです。以前聞いた話ですが、経営者のご子息には経済的にも恵まれ高学歴で有能な人材も多く、親と別の進路を選択する例も珍しくないということです。
 

 前段は専門外の話ですが、後継者問題で角度を変えれば不動産においても同様な点があります。昨今では、廃墟と化した空き家をめぐる問題が地域住民を悩ませるなど社会問題化しつつあります。個々に様々な事情があると思われますが、多くの場合は解体費用の捻出が困難であること。反面、更地よりも居住用家屋が存在する方が固定資産税の軽減を受けられるという好都合な側面もあります。また、相続に次ぐ相続や度重なる転居により所有者の特定すら困難となり、長年、未解決のまま放置された空き家が近隣住民や自治体を悩ませてきた例も少なくないでしょう。そこで、平成27年に空き家対策特別措置法なるものが施行され、保安上危険な空き家や不衛生な空き家等を自治体により指導・勧告・命令・強制対処することが可能となりました。
 

 そして、平成28年度の税改正では空き家問題の切り札(実際に空き家対策にどれだけ有効かは疑問ですが)として、親から相続した空き家の売却に対し3000万円の特別控除を受けられるようになりました。これは居住用財産を譲渡した際の3000万円特別控除と同様の制度と言えます。核家族化が進む昨今において、相続した親の居住用財産は相続人が同居していない限り3000万円特別控除の対象にはなりませんでした。しかし、空き家の3000万円特別控除では、一定の要件を満たせば控除の対象となります。既に当社でもこの制度を利用し控除を受けた例が何例かあります。仙台圏で住宅の売却により3000万円以上の譲渡所得が発生するケースは多くはありませんが、首都圏など地価の高いエリアともなれば話は別です。親が生前にマイホームを売却して3000万円以上の譲渡所得が確実視されるような場合、相続人が複数ならば相続後に空き家を売却した方が空き家の3000万円特別控除を共有者各人で受けることが出来ますので有利になる場合があります。
 

 適用の為には要件があり実務上の注意点のみ列挙しておきます。昭和56年5月31日以前に建築された一戸建て住宅であること。これに当てはまらないことが意外にも多いものです。相続人名義で解体して譲渡すること。譲渡後では手遅れとなりますので、信頼できる専門家選びは必須です。相続開始から3年後の年末までに譲渡すること並びに今のところ時限措置であること。期限がある為早めの行動が必要です。その他、色々要件がありますので詳しくはお尋ね下さい。