2015年7月 vol.165

2015年07月10日

 まだまだ各地では梅雨空が続いておりますが、皆様の地域では天の川を確認できましたか?


 さて、我が国の人口が統計をはじめて最大の減少となったそうです。宮城県の人口も例外ではなく、減少に転じております。東京の一極集中が囁かれて久しいわけですが、そのことを東京の人口増加率が克明に物語っています。その勢いを象徴するかのように、湾岸エリアのタワーマンションや都心の億ションがバブル期をしのぐ勢いで即完を続けています。先頃発表された路線価も大都市圏を中心に上昇を示しました。要因として金融緩和で資金調達が容易になったことや、大企業を中心に業績が好調なこと、株高で世の中にダブついている資金が不動産市場に流れていることなどが考えられます。更に市場に拍車をかけるのが東京オリンピックです。世の中には暗黙の常識のように、オリンピックまで不動産は下がらないという希望的観測にも似た楽観ムードが漂っています。それは、外国人富裕層が日本の不動産に投資する上でも安心材料の一つになっているに違いありません。
 

 仙台市内の不動産も例外ではありません。直接的な復興需要は去りましたが、一部ではその恩恵に与った資金が不動産投資に回り市場をけん引しているように思えます。不動産関係者の間では「物件が無い」が合言葉のように用いられていますが、正確には「好立地で適正価格の物件が無い」が正解です。物件の流通量は明らかに増えていますが、従来の相場観では仕入れも立ち行かず、まさに業者泣かせの相場と言えます。それでも、マンションを例に挙げれば、マンション事業者は一定期間分に相当する用地を確保しているとも言われており、高値での仕入れに応じて当面は高価格帯の供給が続くと予想されます。これにより立地やプレミアム感の高い中古物件も連鎖的に価格が吊り上り、中古相場全体を底上げする結果となっています。あくまでもこれは外的要因で急激に需要が落ち込まないことが前提です。
 

 そして、最近、投資の世界で表舞台に登場しているのがサラリーマン大家さんです。過去の投資ブームとは一線を画し、年金制度や社会保障への将来不安から投資に走る方も多いようです。所得水準や家賃は頭打ちと言って間違いないにもかかわらず、一方では地価も建築費も高止まり状態が続いております。その中で唯一需要を喚起し下支えしているのが低金利と言って過言ではありません。
 

 歴史に学び過去何度かのオリンピック開催国の景気動向を例に挙げると、オリンピックの決定から開催年まで右肩上がりに成長を続けた国はありません。オリンピックの前に必ずと言っていいほど、一時的な下降局面に突入しているのです。次に、人間というのは不思議なもので、過去の失敗体験を繰り返すものです。バブルの苦い経験も20年も経過すると他人ごとになってしまうのでしょう。一説によるとバブルは20年から30年の周期で繰り返すそうです。その時代に第一線で活躍した世代が退き、バブルを経験しない世代へと経済の主導権が移ると、いつの間にか同じことを繰り返すのだそうです。時代は平穏に飽き、刺激を求め舵を切るのでしょう。
 

 国は10年後に病院のベッド数を20万床減らす目標を示しています。入院先を減らすことで長期療養を抑制し医療費を抑える一方、自宅療養や介護施設への入所を促す方針です。ところが、東京圏を例に挙げれば、向こう10年間だけでも後期高齢者は175万人も増加し、その数は全国の増加分の3分の1の数を占めるそうです。最近は、人口減少が進む地方への移住を推奨する動きもあるようですが、はたして地方移住が地方活性化の切り札となるのでしょうか?矛盾点だけが浮き彫りになっているようにも思えます。
 

 首都圏が高齢化を迎えるころ、大都市圏と地方のパワーバランスはどのように変化しているのでしょうか?タワーマンションをはじめ大量に供給された不動産の相場はどのようになっているのでしょうか?この先、大変興味深く思っております。