2015年5月 vol.163

2015年05月10日

 五月晴れが続き、若葉がとても美しい季節をむかえました。今年のゴールデンウィークは、国内と海外を合わせて過去最高の旅行者が予測されておりましたが、全国的に天候にも恵まれ行楽地の人出は予測を上回るものになったのではないでしょうか。中でも外国人観光客の増加は目を見張るものがあります。円安やオリンピック効果の恩恵はもちろんのことですが、欧州方面で多発するテロなどによる治安の悪化に比べ、日本の治安の良さやサービスの質、ひいては文化が改めて見直された結果なのではないでしょうか。テレビなどを見ると、外国人が着目する場所は我々日本人とは少しばかり視点が違いますので、メジャーな観光地以外でも密かな観光スポットになっている場所も少なくありません。こうした場所が外国人から日本人へと派生して行けば、思いもよらぬ形で観光資源が創出され、地域活性化の好循環が生まれるのではないでしょうか。そんな中、日本国内では明治日本の産業革命遺産群として北から南まで8県23施設が新たな世界遺産の登録勧告を受け地域の期待が高まっています。長崎の旧グラバー住宅のように既に観光地化され維持管理がなされている場所もあれば、老朽化による安全確保や周辺の受け入れ態勢の整備など、いくつかの高いハードルをクリアしなければならない場所も多く、決して手放しでは喜べないのも事実であります。


 さて、話題は変わりますが、前号同様ちょっとだけ趣味の話になってしまいますが、ボクシング世紀の一戦を少しだけ解説させて下さい。私のお客様の中で実際にテレビ中継をご覧になった方は少ないと思いますので、最初に結果をお知らせしておきます。試合展開も結果についても前号の私の予想通り3?0の判定でメイウェザーがパッキャオを下し世紀の一戦を制しました。試合内容と結果には各方面から賛否様々な意見が寄せられているようですが、非常に緊迫感のある好試合でありました。素人目から見ると凡戦と評価されても仕方ないかもしれませんが、あのくらいファイトスタイルの異なる実力者が拳を交えると、試合展開の予測は難しくありません。攻めるパッキャオは最後までスタミナこそ切れなかったものの、メイウェザーのカウンターを恐れ今一歩踏み込めずに見せ場を作ることができませんでした。逆に逃げ回っているように見えたメイウェザーですが、ほとんどクリーンヒットをもらうことなく的確にパンチを当て完全に空間を支配したと言えます。その華麗なディフェンステクニックを見れただけでも十分に価値があった試合だったと思います。
 

 ここでメイウェザーの戦い方を考えてみたいと思います。年齢は38歳。プロスポーツ選手としてのピークは過ぎたと言えます。戦績は48勝無敗(26KO)。階級制の競技であるボクシングにおいて、階級を超えて最強を意味するパウンドフォーパウンドと称されるボクサーであります。勝利数の割にKO勝利が少ないのにお気付きの方も多いと思いますが、徹底したアウトボクシングで打っては離れ、鉄壁のガードと史上最速とまで言われるスピードで相手のパンチをかわし試合を支配する。それが彼の戦い方であり彼が長きに渡り無敗を誇り、38歳にして今も頂点に君臨し続ける理由なのかもしれません。メイウェザーの26のKO勝利のうち大半がデビューからキャリア中盤に積み上げたものです。彼は5階級を階級を上げながら制覇しましたので、上の階級になればなるほどパワーが必要とされ、逆にパンチによるダメージが増すため、高度なディフェンステクニックが必要とされます。更に歳を重ねるわけですから、年々安全な戦い方に変化してきた結果がKO率低下につながっていると考えられます。ゆえに打ち合わないファイトスタイルを良しとしないファンが多いのも事実です。しかし、厳しいプロスポーツの世界において20年もの長きにわたり多額のファイトマネーを稼ぎ続けることができたのも、危険を冒さずアウトボクシングに徹し自らのボクシングスタイルを確立した結果だと思います。世紀の一戦を通し、ビジネスの世界においてもディフェンスがいかに大切か学んだような気がします。