2014年8月 vol.154

2014年08月10日

 残暑お見舞い申し上げます。真っ赤な太陽と青い海。灼熱の季節もいよいよフィナーレが近づいて参りましたが、各地では連日猛暑日が続いております。皆様も体調管理には十分にご注意下さい。


 仕事柄新規にアパートをご契約される方の入居申込書に目を通す機会があります。最近特に目立つのが、オフシーズンでありながら仙台に就職を求め転居されてくる若者が非常に多いことです。そのほとんどの方が地方からの転入です。地方に仕事が無く仙台で就職活動をされる方、既に内定を受けている方、現在の職場を退職され仙台へ引っ越してこられる方等様々です。何れの場合も新たなチャレンジの場に仙台を選ぶのには、地方での生活に将来不安を感じていることが少なからず影響しているに違いありません。親にとっても東京は遠いけど仙台なら許容できるということもあると思います。
 

 実は関連したニュースで、先頃東北の137の市町村が2040年には人口減で「消滅可能性」にあるとする衝撃的なデータが公表されました。宮城県では石巻市を筆頭に23市町村の名が挙げられました。これは子供を産む中心世代の若年女性人口が2010年比で50%以下になることで分類されているそうです。今後はなお地方の衰退が進むとされていますが、着目すべきは青森、秋田の両県庁所在地ですらその対象となっていることです。このインパクトは他の市町村よりも大きいものがあります。地方における経済のけん引役となる都市が単独で存続できないとなれば、今後も仙台のような地方中心都市に就学や就職先を求め若者の流出が続くことになるでしょう。これまで地方は補助金や公共事業頼みの政策を続け、どの自治体も同じ方向を向いていました。今後は地方の特色を生かした町作りや、その魅力を都市部の若者にアピールしUターンやIターンを促し人口を確保するような施策が急務とされています。現に衰退産業とされている農林漁業にマネジメントを加え販路に突破口を見出し成功している自治体も少なくありません。近い将来、自治体の再編は回避できないと思いますし、行政の効率化という大義のもと今と同レベルの行政サービスを享受することは難しくなっていきます。現在無料で受けているサービスは有料化され、そこに社会インフラの老朽化が待ったなしで追い打ちをかけ住民の負担は増すばかりです。
 

 そして、これまで勝ち組とされ人口の流入が続いてきた都市部でさえ、高齢化が加速し人口構造がいびつになり今の経済規模を支えるのは困難になるかもしれません。外食や衣料品等の消費が落ちれば家賃や賃金も下落し、巡り巡って家計にも影響が及びます。賃金が下がれば結婚する若者も減少し、更に少子化が進み負の連鎖を止めることは困難になります。
 

 先日、総務省から全国の空き家率が公表されました。空き家の数が約820万戸、総住宅戸数に占める割合は実に13.5%です。人口減少や高齢化が進む地方がその上位を占めていますが、今後は都市部にも影響してくることが予測されます。同じ都市部でも賃貸への転用や売却がスムーズな不動産は活用の余地がありますが、交通の便が悪かったり、建築基準法等の法令に合致しない土地や崖地等の危険地帯で加工にコストがかかるような物件は解決が難しい場合があります。興味深いのは空き家の内訳ですが、賃貸住宅が52.4%(429万戸)で半数を占め、売却用不動産の在庫やセカンドハウスを除いたその他の住宅が38.8%(318戸)存在します。何らかの事情で利用されていない住宅は賃貸住宅のそれに近い水準にあり、今後は相続が放棄され廃屋となり放置される不動産が急増するのではないでしょうか。東京オリンピック開催の陰で我が国の人口問題は刻一刻と現実となり我々の日常に忍び寄っているのです。