2013年5月 vol.139

2013年05月10日

 木々の若葉が美しい季節となりました。春風薫る5月、皆様には益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。


 ここのところ、円安による副作用が取り沙汰されております。数ヶ月前までは国民の多くが円安を望んでいたはずですが・・・。そもそも今起きている現象は円安ではなく、極端な円高の是正に過ぎず、数年前の適正水準に戻りつつあるだけなのです。それだけ日本の消費者は円高による恩恵とデフレ環境に慣れてしまい、都合よくも快適な暮らしを送ってきたのかもしれません。この反動を果たして副作用と呼ぶのでしょうか?リーマンショック以降、多くの日本の大企業は円高対策に苦心し、皮肉にもその結果、体力が強化されてきただけに円安による今後の反転攻勢に期待がかかります。
 

 さて、話しは変わりますが、先日、耐震性不足を正当事由として認めた異例と言っても良い判決が東京地裁で下されました。判決では、家主側の正当事由を認め、「建物の明け渡し」、「明け渡しまでの違約金として賃料の1.5倍相当額」、「訴訟費用は被告負担」とした上で、判決の仮執行(控訴等で裁判が継続した場合においても被告を強制退去させることができる)を認め原告の全面勝訴となりました。
 

 その舞台となったのは東京都日野市の高幡台団地、建物は既に築後30年を経過しており、耐震性を示す指標であるIS値も0.3と低い水準にあったそうです。建物を所有するURが老朽化により耐震性を満たさないことを理由に数年ほど前から住人約200名に対し退去を求めてきた結果、移転に応じなかった7名の住人に対し提訴した事件です。当初、URでは耐震改修工事も視野に入れ建物の維持を検討したようですが、費用対効果と機能性が大幅に損なわれることを理由に解体に踏み切りました。 
 

 これまでの事例では、耐震性を理由とした家主側の正当事由を認めたケースは少なく、結果として家主側が一方的な負担に応じることで解決が図られてきました。特に正当事由については法律上も明確な基準が無く、それゆえに、これまでも様々な論争を生んできました。しかし、今回のケースは、過剰なまでのストックの時代に突入した我が国の住宅事情の転換点とも言うべき事案であり、潮流を変える判決と言っても過言では無いでしょう。一方、注視すべきは家主側が無負担ではないということです。裁判所はURが入居者に対し提示した移転先の斡旋や転居費用について「退去に伴う経済的負担に対し十分に配慮した手厚い内容」と評価しています。URでは退去費用等を非公表としていますが、それなりの条件を提示したことは明白で、逆に考えると民間の家主がそれほどの負担を許容できるのかに疑問も残ります。
 

 それにしても、この判決により、老朽化した建物の建て替えの促進や、再開発のきっかけになることは間違いなさそうです。ひいては、官民問わず減災・防災が我が国復活へのキーワードであり更なる法整備が急がれます。