2012年9月 vol.131

2012年09月10日

 寝苦しいい夜が続いておりましたが、朝晩の風にようやく秋の気配を感じるようになりました。


 永田町では早くも総選挙へ向けた動きが慌ただしさを増してきました。国民不在の中、今国会は事実上の閉会、重要法案も棚上げのまま我が国はいったいどこへ向かっていくのでしょうか。
 

経済面では、我が国の液晶技術の象徴でもあったシャープの再建をめぐる動きに衝撃が走りました。従業員や取引先、そして工場立地自治体に与える影響も大きいだけに、今後の動きにも関心が集まります。

 世界の市場で苦戦を強いられ、価格競争力を失ってしまった我が国の家電メーカー。しかし、決して技術が通用しなくなったわけではありません。家電製品に限らず、あらゆる産業に共通することですが、完成までの過程にはいくつもの部品を組み立てていきます。我が国に台頭してきている新興国は、いわば世界の組み立て工場であり、我が国の部品を開発・製造する技術には到底太刀打ちできるはずもなく、我が国の部品供給が無くては成り立ちません。だからこそ、日本人はもっと自信を持って世界戦略を練るべきです。
 

 やがて、新興国市場も成長・安定・成熟の段階を歩んでいきます。それに伴い、実需以外の贅沢品需要が増えれば、その市場の可能性は計り知れません。今こそ国をあげた産業の再構築が必要であり、メイドインジャパンの付加価値を高めることに備えるべきです。そこにこそ、中小企業の存在意義があり、重要な役割を果たすのです。
 

 類似する例があります。スイスの時計産業です。その歴史は16世紀に遡ります。宗教改革によってフランスの時計職人とスイスの金細工師が、それぞれの立場を失いかけたところで融合し、後にジュネーブで高級時計産業は開花します。その地位は歴史上の様々な技術開発により不動のものとなりました。ところが、19世紀後半に入るとアメリカの台頭により、部品の大量生産が可能となり、スイス勢は苦境に立たされます。更には20世紀後半、日本のクオーツの登場で、当時電子産業が存在しなかったスイスでは国内の時計産業の半数が倒産し、その結果、時計産業の就業人口は3分の1にも減少、衰退期を迎えました。
 

 それでは、なぜスイスが名実ともに世界のトップの地位へと見事復活を果たすことができたのでしょうか?それは「大規模グループ化」と「機械式時計への資源の集中」と言われています。そして、近年の成功は中国をはじめとするアジア市場の取り込みにあったとされています。奇しくも我が国が、新興国市場で価格競争にさらされているのと時を同じくします。
 現在もスイスの時計というと機械式時計のイメージが強いはずですが、実はその割合は全体の1割ほどに過ぎず、残り9割は電子時計なのです。ところが、輸出全体でみると機械式時計が半数を占めています。機械式時計の高い技術力がスイスブランドの地位を世界的に高めているのです。ここにこそ世界戦略の本質があると言えます。時計によっては繊細で複雑なものも少なくありませんし、毎日ゼンマイを巻きながら使用しなければならないものもあります。正確な時間を把握するための性能なら電子時計には到底及びませんし、そうかといって、素材やデザインといった見た目だけの価値で、それほど高価なものが支持されるとも思えません。おそらく人は、手づくりというその製造過程に職人への尊敬の念を抱き、歴史に裏打ちされた様々なブランドエピソードに不変の価値を見出すのでしょう。更には、手づくりによる少量生産に他人とは違うステイタス性を求めているに違いありません。

 

 今こそ我が国は、イメージリーダーとなるカテゴリーを育て、その産業全体を底上げし、「日本イコール〇〇」というような代名詞となる商品を世に送り出し、高付加価値で世界に売り出すべきです。それには大規模グループ化を支える中小企業の存在が欠かせません。そして、必ず日本の製造業は復活します!!