2011年10月 vol.120

2011年10月10日

 富士山では、例年より早く初冠雪が報告されました。秋は駆け足で山を下っております。皆様のもとにもあっという間に紅葉の便りが届くことでしょう。


 さて、東日本大震災の発生から半年が経過しました。被災地を取り巻く環境も徐々にではありますが、変化しつつあります。以前もお話ししましたように、東北の被災三県の一部では、全国よりあらゆる人やモノが集まり、不況を感じさせないほどの復興特需に下支えされております。しかし、その陰で我が国の経済は以前にも増して悲鳴を上げています。国民一人あたりのGDPは既に先進国の中でも下位グループに属しており、国の借金は1000兆円に迫る勢いで増え続けています。このままでは、借金が国民の金融資産を逆転するのも時間の問題です。
 世界情勢に目を向ければヨーロッパとアメリカの経済不安が世界中に飛び火しようとしています。先日、ニューヨークのウォール街でも若者達が富裕層を標的に抗議デモを敢行しました。少し前にはイギリスでも若者が暴徒化し街中の至る所を破壊した事件が報告されています。こうした動きを見ると、世代間価格差拡大によるストレスは日本だけではないようです。もう一つ、先進国共通の流れが富裕層への増税です。アメリカではバフェットルールに象徴されるように富裕層課税が決定しており、何れ日本へもその流れが訪れることでしょう。事実、現職の総理は富の再分配による中間層の拡充を明言しておられます。
 構造不況に千年に一度の大震災。この国難を政治家や官僚はどう思っているのでしょうか?何の成長戦略も示せないまま、「自分たちの世代で返済を」なんて言うは易しで、実は安易な増税に走ろうとしているだけ。デフレや円高にも今のところ打つ手なし。経済が頭打ちで、新興国に成長の活路を見出すしかないのはどこの先進国も同様ですが、他と勝手が違うのは、日本だけが通貨高に苦しみライバル国からも取り残されるような異常事態なのです。そんな状況下での増税は経済に水を差すだけで、復興による経済成長の芽まで刈り取る結果になりかねません。

 最近の政治には、哲学や思想に基づいた筋の通ったものが感じられず、一時的な感情や見識の低さによる議論が多過ぎます。加えて、国会のねじれ現象がそれを加速させている。どこの政治家も旗を掲げるどころか、周囲の顔色ばかりを見て方針転換するありさま。これでは国民がどこを向いて良いか分からない。だから、閉塞感や将来不安が社会全体に蔓延しているのだと思います。
 

最近、被災地仙台に職を求め多くの人々が集まっていると聞きます。就職先が見つからずホームレスが急増しているとのニュースが聞こえてきました。思わず私は、一緒にテレビを見ていた経営者の方と顔を合わせて首を傾げました。職がないのではなく、やる気がないか、えり好みしているかのどちらかであり、みんな自分に都合の悪い時だけ弱者に成り下がるのです。


 最後に、以前ご紹介した賃貸住宅の更新料裁判の結果をお知らせしておきたいと思います。不動産業界が注目した本事件は、大阪高裁で更新料の無効が二件、有効が一件と判決が分かれ、上告審の最高裁での判決を待つことになりました。その判決が去る7月15日に下されました。争点は消費者契約法の第10に定める「消費者に一方的に不利益となる」かどうかでしたが、結果的に借主側の返還請求は棄却されました。これにより「高額でなければ更新料は有効」との初の判断が示されたのです。司法は、契約の自由の原則を重んじ良識な判断を下したと思います。契約書を守れないのは信義違反であり、そこに弱者も強者も存在しないと思うのですが、全ては現代社会がもたらした歪みによるものなのでしょう。