2011年7月 vol.117

2011年07月10日

東北もようやく梅雨入りとなりました。省エネと猛暑、復興を目指す被災地には過酷な夏となりそうです。


 忘れもしないあの3月11日午後2時46分、宮城県沖を震源とした巨大地震が東日本を襲いました。この日、私はある契約のため得意先の社長宅を訪問していました。ひと通り契約を済ませ程なくして、聞き覚えの無い携帯電話の警報音と共に大きな揺れが長時間に渡り続きました。社長のとっさの判断ですぐさま庭先へ脱出し、辛うじて難を逃れる事が出来たのです。それから1ヵ月後、震災のため中断を余儀なくされた契約再開のため、社長宅を再訪問した際の事。社長が私のコラムの題材になればと一枚の新聞を手渡して下さいました。日付を見るとそれは2000年3月31日のもの。日本中がミレニアムに沸いた年、株式会社クボタが二面を使い広告したものです。テーマは「エネルギーダイエットへの道」、かのノーベル賞学者利根川進氏が21世紀へ提言したものです。なぜ、そんな昔の広告がというと、その社長が当時の新聞広告に目が留まり、その内容に感銘を受け保管していたものだそうです。社長はこの度の震災を受け、当時の利根川氏の提言が真っ先に思い浮かび引出しの奥から探し出したそうです。その社長のご好意に預かり、私なりに福島第一原発事故による現状を重ね、恐縮にも利根川氏の言葉を拝借しながらその思いに触れたいと思います。


 幸いにも私たちは日本という豊かな国に生を受け、物の見方や考え方においても経済に重点をおいた価値判断をすることが多いと思います。しかし、このような生活をしている民族は世界中でわずか10数パーセントに過ぎません。そして、人類がどんなに繁栄したとしても他の種と同様何れは絶滅する運命にあります。それは、恐竜が1億5千万年生き絶滅した例からも明らかです。人類は誕生から400万年弱、恐竜の40分の1の時間しか生きていないにも関わらず、人間が日々消費するエネルギー量を基礎代謝量に換算すると40t級の生物、すなわち中型恐竜を凌ぐ大きさに値するそうです。氏は、これだけの大きさの恐竜が日本だけでも1億2千万頭も生存しているのだから、人類はそう長く続くはずがないと説いています。続けて、長く種を存続させる命題をどのようにして実現させるか、氏は三つの選択肢を示しました。①自らのエネルギー肥満を解消するか、②宇宙に飛び出し巨大恐竜であり続けるか、③遺伝子組織を変えて自らの脳のメカニズムを変更し人類であり続けることをやめるか。最も現実的なのが①エネルギー肥満の解消である事は明白です。
 

 福島第一原発事故を契機に、人々のエネルギーへ対する考え方にも変化が現れ始めました。これまでも、化石燃料等のエネルギー資源が無限に続くとは誰も思っていなかった。ただ、自分が生きているうちは大丈夫という楽観論は誰の心にも間違いなく存在したはずです。ところが、それを否定しなければならない現実と向き合うことになりました。いかなる生物も食料や住処となる場所の制約を超えてその数が増え続けることはあり得ません。既に先進国の暮らしは、その制約の極限にあるといっても過言ではありません。人類が限りない欲望と好奇心を追求する限り、自らが種の寿命を縮めているのです。この夏、電力不足が懸念され、企業・一般家庭を問わず様々な工夫が行なわれています。多少は窮屈な暮らしを強いられるかもしれませんが、少しずつ工夫する生活に手ごたえを感じはじめたのも確かです。これまでの過剰なまでの利便性の追求からエネルギーダイエットへ。そのことを我が国が震災からの復興と同時に世界に対し手本を示す時がやってきたのかもしれません。