2011年5月 vol.115

2011年05月10日

 東日本大震災から2ヶ月。被災地にも遅い春が訪れ、徐々にではありますが復興に向けた明るい話題も増えております。


 震災後ほどなくして、我が家へ戻る道のりを思い出しますと、絶望すら覚えました。その光景に、沿道の復旧に少なくとも1年はかかるだろうと思ったのが、今では2ヶ月あまりで街にも灯りが戻りはじめました。日本の技術はもとより、地域の復興へかける情熱がそのスピードの源になっている事は言うまでもありません。
 

 さて、これからお話しすることは奇しくも某ビジネス誌と重複する題材となりますが、私の経験に基づくもので、決して盗作でない事を予めお断りしておきます。これまで、マンションの価格は上階に行くほど高額になるのが常識でした。供給側も上階に行くほど間取りを広くしたり、独立性を高めたり、又はグレードを上げたりとプレミアム性を付加してきました。特に上階からの眺望や開放感は何物にも代えがたいものがあります。ところが、これは供給側の一方的な価値観の創造に過ぎず、固定資産税評価額は1階も最上階も変わらない事を知る人は意外に少ないのではないでしょうか?要するに上階に行くほど評価額と販売価格とのギャップが生じるため、究極の相続対策ともなり得るのです。
 

 それはともかくとして、震災後、上階の部屋から引越しされる方や、契約済み住戸をキャンセルされた方が続出した事は事実です。免震構造以外で多くのマンションに共通したのは、上階ほど揺れが激しく、家具等の転倒や落下が多く確認された事です。加えて電気温水器の転倒も上階の被害の特徴です。一方、その揺れを下階で吸収しますので、下階は揺れが少ない分、室内の安全は確保されますが、その半面クラック等の損傷が入りやすい。実際に私が同じマンション内で震度5クラスを最上階と低層階で経験したのですから間違いありません。それから、停電により水道やエレベータが機能不全となりますので、水や食料を外部から調達するにしても、階段での上り下りを強いられます。仮に自家発電装置が作動したとしてもエレベータは安全確認が出来ない限り自力での復旧は出来ません。又、機械式の駐車場が停電により動かなくなり、車の出し入れが出来なくなるなど、都市部の災害対策の脆さを露呈した格好となりました。
 

 その結果か、明らかに増えているのは低層階を求めるお客様の数です。今後は、眺望やステイタスよりも安全性を求める機運が高まり、これまでの価値観や相場観が変わる可能性も否定できません。不動産取引の際にも、震災での被災状況の明示を求められるケースも増えてくるものと思われます。又、消費者はその土地の地歴や地盤に関してもこれまで以上にシビアになる事でしょう。
 

 このような例もありました。マンションの玄関ドアが地震により押しつぶされ開閉困難となった例です。二次的に火災が発生した場合、部屋から脱出出来なければ命の危険にさらされます。最近では耐震ドアなるものが普及し、安全は確保されていますが、肝心の非常用扉が耐震仕様になっていなかった例もあります。同様に構造体が免震構造で地震の被害を最小限に抑えたとしても、付帯する配管やサッシの性能が追いつかない例も報告されています。
 

 ライフラインでは、仙台市内中心部の被害が比較的少なかった事と、県庁や市役所等の公共機関が集中している事もあってか電気・水道とも復旧にはそれほど時間を要しませんでした。よって、中心部のオール電化住宅では震災翌日から普通の生活が可能となりました。但し、これはこれまでの話しです。今夏の電力不足が既に懸念されています。トータルで災害に強い家作り、更には街づくりが重要になってくるのは言うまでもありません。