2011年2月 vol.112

2011年02月10日

 立春を迎えましたが、まだまだ厳しい寒さが続いております。皆様体調の管理には十分にお気をつけ下さい。


 さて、先ごろ、平成23年度政府税制改正大綱が閣議決定され、その内容が明らかになりました。住宅関連では、これまでの軽減税率やエコポイントの延長が盛り込まれ、復調の兆しが見える不動産業界にとっては追い風となりそうです。
 

 一方、これまで一部の富裕層にしか関係の無かった相続税にもメスが入ることになりました。既に現行法の基礎控除枠を前提に相続税対策を行われてきた方々にも更なる対策の見直しが必要となりそうです。また、これまで無関係と思われた方々までもが課税の標的とされますので、既に相続時清算課税制度を利用して贈与を済まされた方等も念のため再検証をされることをお勧めします。
 

 その相続税、大儀は、世襲による富の継承から貧富の格差是正を図るとの目的ですが、背景には国の財政難があることは言うまでもありません。加えて、地価の下落等で相続税の税収がピーク時の4割程度にまで落ち込んでいるという事情も見え隠れしています。課税の対象となる地価や株価の下落、その他資産の目減りは全て経済規模の縮小に起因するところが大きいと思うのですが、それを課税対象者の裾野を広げて穴埋めしようというのですから支離滅裂としか言いようがありません。
 

 政府は、今回の改正により課税対象者3万人増の年間3000億円の税収増を見込んでいるそうです。改正内容を大きく分けると、1995年から据え置かれてきた?基礎控除額を3000万円+600万円×法定相続人の数に減額、?税率の細分化並びに最高税率の引き上げ、?死亡保険金の非課税枠縮小が挙げられます。これらにより大企業の管理職クラスや、大都市圏以外でも地方都市で都心にお住まいの方(小規模宅地等の特例はありますが)等も課税の対象になりかねません。相続財産のうち不動産が占める割合は6割程度とされていますから、いかに日本は土地長者が多いかをうかがい知ることができます。参考までに、一年間に納税される相続税のおよそ半数は東京国税局管轄内から徴収されているそうです。
 

 歴史を振り返れば、バブル期には地価の高騰が原因で、借地権や都心の住まいの評価だけで相続税が課税され理不尽にも家を手放した方、納税を苦にされ自殺者までも現れました。パナソニックグループの創業者松下幸之助氏が亡くなり、遺族が854億円もの相続税を納税したのもこの頃でした。その松下氏にも、会社創業期に税務署との間に納税をめぐる疑義が生じた際、2晩も悩み通した末に「お金を自分のものだと思うから悩む。全部国家のものだから取るだけ取って下さい。」と悟ったとの逸話が残されています。そんな境地には到底辿り着けそうにありませんが(笑い)。
 

 話は戻りますが、このまま国の借金が続けば、国債の発行残高は3年後には国民の金融資産を上回ることになり、安全性の裏付けがなくなります。内需の拡大が見出しにくい中、社会保障費等の負担も重くのしかかり、極めて不安定な時代に突入しようとしています。大増税は待った無しの状況です。相続税は、消費税と違って課税対象者が富裕層に限られるだけに国民感情をあおらずに済みます。ゆえに手をつけ易かったと言えるでしょう。富の再分配を否定するつもりはありませんが、自社株、農地、山林、遊休不動産等、換金が困難な資産までもが課税対象になる仕組み自体に問題があると思うのです。これでは、結果として相続人に負担を強いることになります。そんな血税を安易なバラ撒きのために用いても誰の幸福も生みません。