このコラムは毎月10日マックスホームで発行しているコラムの
一部を抜粋したものです。
気宇壮大
2016/11  vol.181
 景色は一気に秋の深まりを見せ、冬支度に追われる毎日となりました。今年も残すところ2ヶ月を切りましたが、皆様風邪などには十分ご用心下さい。
 さて、熊本地震から6ヶ月が経過しましたが、いまだに先の見えない生活を強いられている方々が沢山いらっしゃいます。東日本大震災と比べるのは無意味かもしれませんが、報道を見る限り復興のスピードが遅いように思えてなりません。こうした地震の恐怖や不安も冷めやらない中、先月9日放送のNHKスペシャルで「あなたの家が危ない」をご覧になって衝撃を受けた方も少なくなかったのではないでしょうか。今回の熊本地震で倒壊した家屋の中に新耐震基準の住宅が複数含まれていたことをご存知だったでしょうか?その後の専門家の検証によれば1階と2階の壁のつながりを示す直下率が倒壊の要因とされています。これは、1階のリビングの空間を優先した結果、1階の壁面積が減り直下率低下を招くもので、地震の揺れで1階が2階の重さに耐えられなくなり倒壊するというメカニズムです。熊本地震が物語るように新耐震の安全神話はもろくも崩れ去りました。注文住宅の場合、建築を請け負うハウスメーカーや工務店は施主の意向を尊重する傾向が強く、万一の際のリスクという点が検証されていないのが実情のようです。
 もう一つ知っておかなければならない事実があります。それは「地震地域係数」というものです。法律では、地震の起こりやすい地域とそうでない地域を区別し耐震係数を緩和してきたのです。例えば、地震の多い東北太平洋側、関東大震災を経験した関東地区、東南海地震が予測される東海地区等は係数が1.0であるのに対し、比較的地震が少ないとされてきた日本海側や九州地方等は係数が0.9ないし0.8と低く設定されています。簡単に言うと鉄筋やコンクリート等の構造体における数量が1.0に対し、0.9ないし0.8で建築が許可されているというわけです。このような緩和を受けている地域が自治体数にして700もあるとされているから驚きです。ところが、係数の低い地域でもこのところ大地震が頻繁に発生しているのは周知の事実です。多くの専門家が指摘する通り我が国は地震活動期に入ったとされ、至る所で大地震が発生するリスクを抱えています。記憶に新しいところでは、中越地震、能登地震、鳥取地震、福岡西方沖地震、そして今回の熊本地震等が挙げられます。執筆の間にも鳥取でまた大きな地震が発生しています。
 私どもも多くの住宅を扱うわけですが、取引においては必ず東日本大震災時の被災状況を確認しています。調査の結果、自治体により「全壊」と判定された物件も少なくありませんが、あの混乱の中、お手盛りでは?と思われる判定も少なくはありませんでした。実際に「全壊」と判定されたマンションでも文字通りに解体を余儀なくされた物件は数えるほどしかありませんでした。震源が直下型と海溝型では異なりますし、先の地震係数の違いもあります。加えて、インフラの耐震化等の整備状況という点においても地域差は明らかのため安易に比較はできませんが、構造壁の鉄筋がむき出しとなった熊本の映像を見る限り直下型の恐ろしさを思い知らされた気がします。
 次に、長周期地震動についても専門家は警鐘を鳴らしています。東日本の際にも遠く離れた関東地方で長時間の揺れを観測しました。まさにこれが長周期地震動といわれるものです。地震が起きると様々な周期の揺れが発生し、その揺れが1往復する時間を周期と呼ぶそうです。高層ビルの固有周期は低層の建物に比べ長いため、高層階ほど長時間揺れることになります。地震の揺れを吸収する免震構造のビルでさえも、繰り返す地震の揺れにより免震層にたわみが生じることがあり、本来の性能が発揮できなくなる場合があると指摘されています。我々の生活は、過去の知見の積み重ねにより定められた法規の上で守られてきたわけですが、昨今の自然の猛威はそれらを根本から覆すものです。自然が相手である以上完璧はないかもしれませんが、自分の身は自分で守るのが鉄則です。備えあれば憂いなし。今一度、身の回りの安全性から確かめてみてはいかがでしょうか。
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