このコラムは毎月10日マックスホームで発行しているコラムの
一部を抜粋したものです。
気宇壮大
2016/09  vol.179
 観測史上初となる台風の東北地方直撃。甚大な被害となった岩手県、度重なる豪雨に見舞われた北海道の皆様には心よりお見舞い申し上げます。そして、不幸にも犠牲になられた方のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
さて、リオデジャネイロオリンピックが幕を下ろしましたが、今大会も数々の名勝負が生まれ世界中の人々に勇気と感動を与えてくれました。皆様はどのような場面が印象に残りましたか?日本勢では、レスリング女子吉田選手の無念の銀メダル、伊調選手の四連覇、史上初または何十年ぶりにメダルをもたらした卓球やテニス、期待に応えた体操や水泳に陸上競技、そしてニューヒーローを生んだレスリングや柔道競技等、数えればきりがありません。我々は、日本と世界との距離が一層縮んだ瞬間を目の当たりにしたような気が致します。
 一昔前までは、欧米などのスポーツ先進国とは明らかな差がありました。体格差はもちろんのこと、競技人口や指導体制などその差は歴然でしたが、最近ではジュニアからの育成も進み、スポーツエリートを数多く輩出するまでに至りました。
 例えば、ボクシングの世界チャンピオンを例に挙げます。一昔前であれば、腕っ節の強いやんちゃな少年が、いきなりプロの世界に飛び込み、拳ひとつで世界を獲ることもできました。しかし、今は幼少期から基礎を学ばない限り世界では戦えない時代です。親交のあるフィギュアスケートのコーチがこんなことを仰っていました。選手の天性の才能以上に練習量が結果につながる。その練習量とは、才能のある子供が1週間に2、3度リンクで練習をするよりも、才能に劣る子でも毎日練習する子にはかなわない。しかし、そのレッスンを受けるには当然のことながらお金がかかります。つまり、親が熱心でかつ経済的に裕福な家庭にはかなわないと。
 このところ、子供の貧困が問題になっています。親世代の格差が子供にも影響するというものです。先日、某経済史で興味深い記事が掲載されておりましたので紹介します。これによると経済格差を生む3大要素があるそうです。一つ目は職業による所得格差です。これは明らかに学歴に関係してきます。その職業による年収差は5倍近い差があるそうです。二つ目は親からの相続です。世の中で成功を収めた方々の中には親からの財産を相続し、その基礎を築いた方も少なくありません。しかし、親からの相続により何らかの資産を継承する方は全体の3割に過ぎないそうです。簡単に言うと世の中の3分の2以上の方は親から資産を受け取っていないことになり、その差が次世代にまで少なからず影響しているものと考えられます。そして、三つ目が結婚による格差です。高学歴・高職業・高収入のカップル同士が結婚することは少なくありませんが、これを「パワーカップル」と言うそうです。その対極にある「ウィークカップル」とでは、共働きが進む現代において世帯収入格差は広がる一方です。実際には、株や不動産の譲渡税に比べ、額に汗して働いた給与所得に対する税率が高いことが多いわけですから、この格差を縮めるのは簡単ではありません。世の中は矛盾だらけ、ジャパニーズドリームをつかむ人間はほんの一握りかもしれません。しかし、この矛盾と葛藤しながら戦うからこそ人生は面白いのだと思います
 先ごろ、安倍首相は「モーレツ社員を否定する社会」を打ち出しました。運動会の徒競走でみんな仲良く一緒にゴールしましょうと言う教育の現場が生み出したものは、適応力の乏しさと内に秘めた自尊心の塊です。私は、大晦日に「ナンバーワンにならなくてもいい」と国民的番組で合唱している光景に違和感を持つ人間の一人です。でも、どんな時代でもやる人間はやるし、やらない人間はやらないのです。今回のオリンピックで印象に残ったコメントがありました。レスリングで惜しくも銀メダルに終わった太田忍選手の言葉です。「世界で一番練習をした人間が世界一になると信じている。僕は世界で二番目の練習だったので二番に終わった。今度は世界一の練習をして世界一を目指す」と。私もこの言葉を信じたいと思います。
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